Appleは2024年9月、新製品発表会であるApple Event “It’s Glowtime.”を開催した。この記事では、発表された製品だけでなく、本イベントの持つ特徴についても併せて振り返っていく。
メディア向けストリーミング、Theater解禁
2020年のコロナ禍より、オンライン中心のイベントに切り替わり、2022年のWWDCよりメディアなどを招待して収録映像をApple Parkにてストリーミング、さらにHands-Onまでできる方式に切り替わっていった。しかし、感染症対策のためメディア関係者は屋外で視聴することとなっていた。それが、ついに今回のイベントよりSteve Jobs Theaterでの視聴に戻り、収録にこそなったものの2019年以前を彷彿とさせる。
オープニング映像
毎回、Apple Eventの最初にはオープニングの映像が流れることが通例となっているが、今回は”Designed to make every day something to celebrate”という障がいを持った方のApple製品の活用事例を紹介するものだった。おそらく前々日に閉幕したパリパラリンピックに関連したものだったのだろう。
発表された製品群
Apple Watch Series 10
第10世代の節目となる当モデルでは、サイズ増と薄型化によるデザインの変更があった。ディスプレイについては、40%輝度が改善したほか、広視野角のOLEDを採用することで斜めから見た時の視認性が向上し、広視野角OLEDの特徴である電力効率を活かすことで毎秒更新のAlways-Onを搭載することでより具体的な情報をAlways-On時に表示できるようになった。併せて、毎秒更新の映える「フラックス」文字盤が追加されている。
そして、Carbon Neutralへの取り組みとして、製造コストの大きいステンレススチールを廃止し、代わりにアルミニウムモデルに光沢感のあるジェットブラック、そして新たにチタニウムモデルを復活させ、3色ともが光沢仕上げとなった。それぞれアルミはジェットブラック・ローズゴールド・シルバー、チタンはナチュラル・ゴールド・スレートの色展開となっている。また、これに併せてミラネーゼループ・リンクブレスレットの2つのステンレスバンドは、いずれもチタニウム製に置き換えられ、色も今回登場したモデルの色に合わせられる形となった。これにより、本体はすべてCarbon Neutralで揃い、且つそれに合わせるバンドもCarbon Neutralの比率が高まることとなった。
健康関係の機能では、新たに睡眠時無呼吸症候群の検出に対応した「睡眠の乱れ」を測ることができるようになった。
Apple Watch Ultra 2
今年はついにUltraの新モデル投入はなしとなった。その代わりとして登場したのが、去年のUltra 2にカラーバリエーションを追加するという策だ。今までApple Watch Ultraはナチュラルチタニウム一色だったが、そこにブラックチタニウムが追加されたことにより、2色展開となった。
併せて、双方の色に対応する新バンド「チタニウムミラネーゼループ」が高級路線として追加された。さらに、HermèsとのコラボであるApple Watch Hermès Ultra 2が新規投入されるなど、一般層に対しても高級時計として売るという戦略が生まれた。
AirPods 4
AirPods 3の登場から3年が経過し、待望の無印の新型が登場することとなった。インナーイヤー型という特徴は受け継いだまま、新たなデザインへと変更され、充電ポートもUSB-Cになった。加えて、179ドルの上位モデルも発表された。上位モデルでは、無印シリーズ初となるアクティブノイズキャンセリング(ANC)が搭載されたほか、QiやApple Watch Chargerでの無線充電やFind Myのスピーカーにも対応するなどAirPods Pro 2に近しい機能が増えた。ケースサイズもAirPods史上で最も小さくなった一方で、バッテリー持ちに関してはケース込みで30時間と前世代と同等水準にした。なお、筆者はANC対応の上位モデルを予約注文済みのため、到着後のレビューについても今後執筆予定である。
AirPods Pro 2
昨年発表・発売されたAirPods Pro 2へも多数のソフトウェアアップデートが入ることが発表された。同モデルのイヤーチップとH2チップの活用により、毎秒48,000回の速さで雑音を低減できる。また、聴力についてもユーザーが簡単に測れるようにし、且つそのデータを医師に共有することもできる。さらに、「Hearing Aid」という補聴器機能も搭載した。これらの機能は、Apple Hearing Studyで研究され、科学的な根拠に基づき搭載されている。さらに、今秋に世界的な保健機関による認証を受け、米独日をはじめ100カ国以上で利用できるようになる。
AirPods Max (USB-C)
AirPods MaxではLightningを廃止しUSB-C化されたほか、ミッドナイト・スターライト・パープル・オレンジ・ブルーの全く新しい5色展開がされた。端子の変更以外の進化ポイントはないが、これによりAirPodsシリーズ全モデルがUSB-Cポートを搭載した。
iPhone 16
iPhone 13以来となるカメラバンプの配置が変更され、超広角とメインカメラが縦配置となった。これにより、Apple Vision Proで利用できる空間写真や空間ビデオに対応することとなる。
このモデルは、初めてApple Intelligenceを前提に設計されたモデルであり、新たにA18チップが搭載された。これにより、すべてのApple Intellingence機能を利用することができる。
本体右側面には、再度ボタンの下に新たにCamera Controlが追加された。Camera Controlは仮装ボタンとなっており、Hapticフィードバックによって押すことができる、iPhone 7以降のホームボタンに近しい構造となっている。このボタンを押すことでカメラを起動し、シャッターを切ることができるほか、左右にスワイプすることでズームや露出、ƒ値を変更することができる。さらに、このボタンを押すことでApple Intelligenceのかざすことで対象物を検索できる機能を呼び出すことができる仕組みも搭載されている。
さらに、本体前面のCeramic Sheldも50%頑丈になっており、他社のスマートフォンと比較すると2倍の差があると謳っている。
iPhone 16 Pro
当モデルでは大型化がされ、史上最薄のベゼルとすることで筐体サイズの増加量は最小限に抑えつつ、Proは6.3インチ、Pro Maxは6.9インチの画面サイズとなった。本体の仕上げも、従来のヘアライン仕上げのチタニウムからテフロン加工のようになり、色は従来のホワイト・ブラック・ナチュラルチタニウムに加えてデザートチタニウムという砂金色が追加された。
同モデルでは、A18 Proチップを搭載し、Apple Intelligenceの応答速度が最大で15%従来より高速化する。また、無印モデルと同様のCamera Controlも追加されたほか、Ceramic Sheldも強化された。
カメラの進化では、4K120pでの動画撮影にシネマティックモードやProRes/ ProRes Logを含め対応した。さらに、120pで撮影した後に写真アプリからの編集により60pや24pのスローモーションにできる機能が追加された。このほか、超広角カメラが48MPに高画素化され、メインカメラと同様のピクセルビニングにより12MPでの記録ができる。
また、マイクも強化され、空間オーディオでの収録に対応したほか、それを活かして映像収録後にシーンに応じたノイズ処理をかけられたり、ボイスメモにて裏で音声を流しながらの収録に対応したりなどの進化を遂げた。
今回は、ハードに限らずA18 Proチップを活用したソフトウェア面での進化が多いかったように思う。新機能の箇条書き一覧は以下の通りであり、価格の変更はない。当モデルでは大型化がされ、史上最薄のベゼルとすることで筐体サイズの増加量は最小限に抑えつつ、Proは6.3インチ、Pro Maxは6.9インチの画面サイズとなった。本体の仕上げも、従来のヘアライン仕上げのチタニウムから平滑的になり、色は従来のホワイト・ブラック・ナチュラルチタニウムに加えてデザートチタニウムという砂金色が追加された。
同モデルでは、A18 Proチップを搭載し、Apple Intelligenceの応答速度が最大で15%従来より高速化する。また、無印モデルと同様のCamera Controlも追加されたほか、Ceramic Sheldも強化された。
カメラの進化では、4K120pでの動画撮影にシネマティックモードやProRes/ ProRes Logを含め対応したほか、超広角カメラが48MPに高画素化された。ただし、メインカメラと同様のピクセルビニングにより12MPでの記録ができる。
また、マイクも強化され、空間オーディオでの収録に対応したほか、それを活かして映像収録後にシーンに応じたノイズ処理をかけられたり、ボイスメモにて裏で音声を流しながらの収録に対応したりなどの進化を遂げた。
今回は、ハードに限らずA18 Proチップを活用したソフトウェア面での進化が多いかったように思う。今回為替レートが昨年同時期との変動が少なかったため、価格の変更はない。
発表全体を通した雑感
今回の発表では、ハードウェアだけでなくソフトウェア関係の新機能が数多く入った印象を受ける。Apple Watchの睡眠時無呼吸症候群やAirPods Pro 2の難聴対策機能など、ヘルスケアと密に連携したソフトウェア系の機能は特に、今までAppleが収集してきたデータをうまく活かした分野であろう。従来の発表会では、ハードウェアの新機能を多く紹介していたが、今までのことを活かして、それをうまくソフトウェアに落とし込むということが求められる時代へと変化してきたことを感じる。
また、今回のイベントでは「Apple Intelligence」と「Carbon Neutral」という2つのフレーズがしきりに登場した。前者はAppleが推し進めるAI機能で、今回のiPhone 16シリーズの目玉機能でもある。それの活用事例を多く紹介することにより、他社AIとの差別化を図り自社製品の価値を高めることにつながる。そして後者はApple 2030という気候変動対策のゴールの一つで、Appleは2030年までに全製品・ストア・オフィスをカーボンニュートラル化すると宣言している。そして、それに向けて今回Apple Watch Series 10ではチタニウムフレームが復活したりと、カーボンニュートラル製品を増やしている。
この2つの要素は現在Appleが非常に重要視している点であり、これの行方に社運がかかっていると言っても過言ではない。そのため、イベントの場で広くアピールをすることで取り組みを公に伝える役割を持っている。
製品では、ProやUltraと呼ばれるハイエンドだけでなく、無印と呼ばれるコンシューマー機にハイエンド相当の機能を多く乗せてきた。それにより、現在のコンシューマー機は8割以上の人にとって十分なスペックを備えており、勧めやすいモデルにも仕上がっている。具体的には、AirPods 4にはANCが新たについたことでProを買わずともANCへのハードルが下がったり、iPhone 16にApple Intelligenceをフルに活かせる環境を導入することで誰でも使いやすいAIとした。
これらは現在のAppleの戦略を非常に色濃く表したものであり、今後も似た方向性で展開を進めて行くと考える。
さらに、このイベントを見ている人が非常に驚いていた点として「Order Today」があり、イベント後の興奮状態で購入させられる環境が整っているAppleならではの芸当と言えるだろう。また、発売も全て9月20日であり、そこにメディアの取材を集中させることでその日のニュースを掻っ攫っていけるのは注目度をアピールする材料としてはいいだろう。これも、Apple Storeをはじめとした独自の物流網が整っているからこそなせる技だと考える。
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