先日のApple Eventで発表されたAirPods 4アクティブノイズキャンセリング搭載モデルを実際に購入したので、豊富な画像とともに気になる点について詳細なレビューをする。当モデルはAirPodsシリーズの中で初めてミッドティアにアクティブノイズキャンセリングが搭載された機種となる。なお、便宜上以下「AirPods 4 with ANC」と表記するほか、他モデルの世代表記についても括弧なし数字に統一する。
AirPodsシリーズの変遷
AirPodsラインナップの歴史
AirPodsシリーズは、上に示した表のような変遷を辿ってきた。特に、エントリーとミッドティアに当たる無印と呼ばれるラインに注目すると、2016年、2019年、2021年とおよそ2-3年周期での更新となっている。その中でも、AirPods 2以降は性能差によりエントリーとミッドティアの2ラインに位置しており、今作AirPods 4が登場するまではエントリーとしてAirPods 2、ミッドティアに2つのAirPods 3と旧モデル併売により差別化していた。
その中で、今回はエントリーとミッドティアの2つを同時に発表し、いずれもAirPods 4というブランディングによりラインナップが整理された1。エントリーのAirPods 4は旧作のAirPods 2 (Lightning)とAirPods 3 (Lightning)を吸収し、最新モデルとして登場した。一方でミッドティアのAIrPods 4 with ANCについては、ハイエンドであるAirPods Pro 2の機能をふんだんに取り込み成熟したモデルとなった。本記事では当モデルについてレビューするため、詳細なスペックは後ほど紹介する。
購入に至った経緯
筆者は、コロナ禍に入った2020年のタイミングでエントリーモデルであるAirPods 2 (Lightning)を購入した。当時AirPods Pro 1が登場当初で、カナル型の形状のため長時間着用による外耳炎のリスクがあったりと、自宅内での利用を主に考えていたためそれに合わないと判断し無印を購入した。その後コロナ禍も明け外出機会が増え、AirPods Proシリーズは依然として長時間使用に向けたものではなかったが、ANC機能にはとても魅力を感じていた。その中で、AirPods 4 with ANCがインイヤー型として初めてANCが搭載されたため購入に踏み切った、という訳だ。なお、筆者はApple Eventもリアルタイムで視聴していたため、その場で予約注文し無事に発売日に手に入れることができた。
開封の儀
梱包の小型化
Appleは毎回のダンボール梱包に力を入れていることで有名だが、今回もその例に漏れない。近年では環境問題への対策として、プラスチックフリーとするほか、梱包を極力小型化することで一度に輸送できる量を最大化している。今回のAirPods 4では充電用ケーブルの同梱がなくなってしまったが、それにより箱は約1.5倍の小型化を達成している。合わせて、段ボールについても紙の曲げにより四方から押さえつける近年定番の方法を採用しており、そのサイズは手のひらより小さい。
同梱物
先述した通り、今回はケーブルの同梱がなくなった。また、イヤーチップも存在しない形状のため同梱物は最小限となっている。箱についてはApple製品共通である凹凸のある製品写真が表となっており、その凹凸は筆者の手元にあるAirPods 2の箱よりも大きくなっていると感じた。箱を開けると定番の”Designed by Apple in California”とその中にクイックスタートガイドが入っている。クイックスタートガイドは同時発売のiPhone 16ではいよいよ廃止となったが、AirPodsではまだ存在している。内容は至ってシンプルだが、コントロールセンターの絵柄がiOS 18になっていた。また、今回より搭載されたケースのタッチセンサーについても説明が入っている。
AirPods本体は褌(ふんどし)状になった紙に包まれて入っていた。この形状は定番のもので従来より使われていたが、やはりビニールから紙へと変更されている点は注目すべきだろう。おそらく2022年頃から変わっていったものと思われる。
さらに、箱の裏面には各国語で「AirPods 4 with Active Noise Cancellation」と表記されていた。これは並行して発売している通常のAirPods 4と区別するためだ。また、この印刷についても立体仕上げとなっている点は注目すべきで、Appleがいかに箱へのこだわりを持っているかが感じられる。なお、下部にはリサイクルを促す文言が入っており、これは旧来には見られなかった点だ。
デザインをチェック
基本的なデザインは、AirPodsシリーズとして一貫している。しかし、今回はケースとイヤホン、それぞれに変更が加えられていた。
ケースには、AirPods Pro 2から搭載が始まったスピーカーを内蔵しており、Find Myのアプリから音を鳴らして探すことができるようになっているほか、充電コネクタもLightningからUSB-Cに変更された。同時にQiやApple Watchの充電器による無線充電にも対応している。ただし、MagSafeについてはMagSafeリングのサイズがAirPods 4を上回るため搭載はされていない。また、充電やペアリングの状態を示すステータスランプが埋め込み式となっており、消えた状態だとランプがどこにあるのかわからないようなデザインとなっている。さらに、従来ペアリング用に存在していた背面のボタンも無くなっており、その代わりとしてステータスランプ下部をダブルタップすることでペアリングモードへと入れるように変更が加えられた。
ケース上部の刻印には”Assembled in Vietnam”と刻印されており、AirPods Pro 2などと同じく生産工場を中国からベトナムに移行しているということがよく分かる。
イヤホン本体については、インナーイヤー型を採用した旧来のAirPods 2や3と比べても、耳への引っ掛かりの部分が増していることがわかる。ステムはAirPods 3やAirPods Proシリーズと同じく短い形だが、センサー方式はAirPods 3やAirPods Pro 1と同じ感圧式で、AirPods Pro 2に搭載された音量調節対応のタッチセンサーではない。
機能
ノイズキャンセリング
先述している通り、今作は初めてインナーイヤー型のAirPodsとしてアクティブノイズキャンセリング(ANC)に対応した。設定画面では、最上部にノイズコントロールを選ぶメニューが追加されている。
また、ANC機能の搭載についてApple社員は、Engadgetのインタビュー中で以下のように語っている。
イヤーチップのない製品でこの優れた ANC 品質を実現するのは本当に難しいことで、H2チップのパワーがそれを可能にします。そのため、私たちは実際に H2 チップを使って ANC 品質を管理し、マイクから環境ノイズを聞き、できるだけノイズをキャンセルできるようにしています。
—Eric Treski氏 (Home & AirPods担当ワールドワイドプロダクトマーケティングディレクター)
つまり、H2チップを新たに搭載したからこそ実現したANCであるということだ。外部音取り込みモードに関してはつけていない状態との差を感じられない程度であり、且つ本体が軽量で耳の内側に入り込まないため、この軽快さはAirPods Pro 2と比べても優っていると思う。なお、ANC品質を文面で紹介するのは非常に難しいため、再現映像をXにポストしたものを以下に掲載する。
結論としては、かなり優秀だと言える。特に動画冒頭の都営大江戸線若松河田〜東新宿間は都内屈指の騒音と言われており、その中でも問題なくポッドキャストの音声がクリアに聞こえる程度の品質を保っている。
適応型環境音除去
適応型環境音除去とは、2022年に発売されたAirPods Pro 2に初搭載された機能で、周囲の音をダイナミックに上下させる。具体的には、85dBを超える音については軽減し、一方でそれ以外の音については外部音をそのまま流すというモードだ。このモードを使うことで、AirPods特有の自然な外音取り込みを生かしつつ余計なノイズがカット出来る。その機能が、今回のAirPods 4 with ANCには丸々搭載された形となる。
ノイズキャンセリングを使ってしまうと全ての音がカットされてしまうため、歩行時など周囲の音に気を使う必要がある場面では重宝する機能だと感じた。なお、当モードは設定画面より許容する雑音量を3段階から選べるようになっている。
会話感知
会話感知とは、他の人と話し始めた際にメディアの音量を下げ、自動的に外部音取り込みモードにする設定だ。これにより、ANCに妨げられずに会話ができる。
筆者はこの機能をつけた状態でスーパーマーケットでの会計をしたが、外部音取り込みモードになっていることから店員の声をクリアに聞くことができた。その一方で、バーコード読み取りやレジ打ちなどの会話が発生しない間に、自動的にANCに戻ってしまうことから、適応時間の塩梅の調整にはまだ難があると感じた。なお、イヤホンをつけた状態での会話については社会的にまだ賛否分かれる状況のため、この機能を以ってしても適切につけ外しをすることは重要だろう。
パーソナライズされた空間オーディオ
空間オーディオはAppleが推し進めている360度オーディオのことで、このパーソナライズされた空間オーディオはAirPodsシリーズでAirPods 3とAirPods Pro・Maxの全世代がすでに対応している。この機能により、AirPodsに内蔵されたジャイロを用いてヘッドトラッキングし、首を傾けた際にも常に一定の位置から音が聞こえる。
Appleが開発する音楽制作アプリであるLogic Proでは、この機能にすでに対応しており、前後左右自由な位置に楽器を配置できるようになっている。これ以外でも、ステレオを空間化という機能がOSに内蔵されており、空間オーディオに非対応な楽曲や音声でもこのリアリティ溢れるサウンドを楽しめる。
さらに前述のANC機能と組み合わせることで、周囲のノイズを消すことができるため、目の前の音楽に集中して聞くことができる。特にApple Music Classicalのような楽器の位置が重要な音楽では、その効果を最大限に発揮できると感じた。
頭のジェスチャ
iOS 18より、頭を上下または左右に動かすことで、電話の応答や通知の読み上げの操作ができるようになった。デフォルトでは承認・応答に上下、拒否・閉じるに左右がそれぞれ割り振られており、ハンズフリーで操作ができる。この機能のデモは設定から行えるため、実使用の前に試すことをお勧めする。
総括
当モデルは、かなりAirPods Pro 2に肉薄するスペックに達したと感じた。もちろんANCの性能であったり、新規で追加されたヒアリング補助機能であったりとカナル型である点を活かした機能は存在するものの、AirPods 4はかなり「万人ウケ」するようにまとまっていた。特にANCについては、無駄に音量を上げる必要がなくなり、外のノイズも低減できるため聴覚の健康維持にも繋がり、¥29,800というお値段はとてもよい。一方の標準モデルについても、必要十分なスペックを備えた上で¥21,800という価格は魅力的だ。自宅やオフィスなど据え置いて使うなどにも適しているのではとも感じた。
そして、Proについては前述したような特別な機能が入っており、特にヒアリング補助については¥39,800という一般的な補聴器の1/10程度の金額ながらH2チップを活かした声の増強ができ2、一般的なイヤホンであるため周りの視線が気にならないという点からも今後重宝する人が増えそうな機能だと思った。
現行のAirPodsラインナップはかなり整理され、全て端子もUSB-Cであることから自分に合ったスペックのモデルを選びやすい。そして、当AirPods 4 with ANCがほとんどの人にとって「Just Enough」な選択肢ではないだろうか。
コメント