2025年2月20日(日本時間)、Appleは新しいiPhoneのモデルとして「iPhone 16e」を発表した1。この記事では、その発表内容をさらい、現在のラインナップを整理したい。
概要
このモデルは「iPhone 16」シリーズの最廉価モデルであり、iPhone SEの第3世代の後継に位置付けられる。実際、このモデルはAppleの公式サイトや動画で多くiPhone 11などのOLED化される以前のモデルとの比較が多く含まれている。
カメラ
カメラはiPhone 16のメインカメラとほぼ同等の48MP Fusionカメラが搭載されている。Appleは「ツーインワン」と喧伝し、1倍と2倍の2つの倍率が選べる。また、iPhone 14から搭載されたPhotonic Engineや15から搭載されたスマートHDR5に対応する。これらにより、超広角カメラが要らないほとんどのユーザーの需要に応えられる形となるだろう。
しかしながら、iPhone 16と比較したときには超広角カメラが1つ減らされただけでなく、最新世代のフォトグラフィックスタイルが利用できない。そのため、メインカメラだけで比較した際にもiPhone 16の無印に見劣りする点はある。
追記:iPhone 16eのカメラは1/2.55”センサーを搭載しているという情報が出て来ており2、iPhone 16と比べた時には通常撮影時でも差異が発生するようだ。
A18チップ
Apple Intelligenceの動作要件はA17 Pro以上となっているが、iPhone 16eではA18チップが搭載された。これはiPhone 16無印に搭載されているものと同じネーミングだ。内容はiPhone 16無印の上位版A18チップと比較したときにGPUコアが5コアから4コアに減らされている。しかしながら、iPhone 16eでもAAAタイトルのゲームを遊ぶことができるとしているため、将来的な性能含め充分だと言えるだろう。
アクションボタン
IPhone 15 Pro、そしてiPhone 16から搭載されたアクションボタンがiPhone 16eにも搭載された。従来のミュートスイッチを置き換える形で搭載され、各種コントールやショートカットを割り当てられる。
そして、Apple Intelligenceの目玉機能であるVisual Intelligenceがアクションボタンから起動できるとしている。Visual Intelligenceは本来、iPhone 16シリーズより搭載されたCamera Controlキーを長押しして立ち上げることを前提に開発されており、実際Camera ControlキーはVisual Intelligenceの起動のしやすさを意識した位置になっている。そのため、機能としては使えるものの、アクションボタンという位置に配置されているためVisual Intelligenceを本格的に使いたいユーザーは16無印以上を買うべきだろう。
Visual Intelligenceについては別記事で詳細に説明しているため、そちらをご覧いただきたい。

自社モデム「C1」
iPhone 16eでは初めてとなる自社開発5Gモデムを搭載し、「C1」とネーミングされた。これにより、Apple Silliconの省電力性能をより強められることとなり、iPhone 16eは16無印を4時間上回る26時間の連続ビデオ再生を実現した。Appleは省電力性能だけでなく、C1の搭載により高速で信頼性の高い5G通信を実現できると説明している。
著名リーカーとして有名なMark Garman氏はこれを「数十億かけて作った、7年間努力してきた記念碑的なこと」であると評価している3が、一方でこの点については客層を考えてか大々的に発表することはなく、プレスやビデオで少し触れた程度に過ぎなかった。
衛星経由の緊急SOS
iPhone 14より搭載し、サービスを開始した衛星経由の緊急SOSが最廉価モデルながら搭載されることになった。先日、米国内においてT-MobileがiPhoneから直接スターリンクの衛星と通信することができるT-Mobile Starlinkのベータテストを開始した4。このような経緯もあり、緊急系機能の一環として緊急SOSがどのモデルでも使えるというのは一つ安心感につながり、良いのではないだろうか。
ディスプレイ
ディスプレイはiPhone 14と全く同じものであると推察する。スペックシート上では6.1インチのSuper Retina XDRディスプレイ、通常最大輝度が800nitsでHDRピーク輝度が1200nitsと差異は見受けられない。
AppleはiPhone 16シリーズの一つであるため共通して200万:1の高いコントラスト比であることを喧伝するが、実際はiPhone 11 Proや12から変わっていないため、この宣伝の仕方はiPhone 11やiPhone SEシリーズなどLCDモデルからの買い替えを促すフレーズであろう。
価格とラインナップ
iPhone 16eの価格設定は米国価格599ドル、日本円で99,800円となった。実質レートは1ドル151.46円となり、記事執筆時点の実勢レートである151.66円とほぼ同等になっている。10万円を超えなかった点については評価したいが、最廉価モデルの価格設定としては疑問符が残るところもある。
このiPhone 16eが置き換えたモデルはiPhone SEの第3世代とiPhone 14であり5、いずれもLightningを搭載したモデルであったことからEU圏での販売ができなかったため、今回の発表・発売により全てのモデルがUSB-Cで統一された格好だ。前者は$429の¥62,800、後者は$599の¥95,800で販売されていたため、価格のラインナップとしてはSEに当たっていたモデルがすっぽりと抜け落ちた格好になってしまった。
現在Apple StoreでラインナップされているモデルはiPhone 15と、iPhone 16e・16・16 Proの16シリーズという形に統一され、16シリーズのみがApple Intelligenceを使えるという格好に収まった。比較的わかりやすいと感じるが、一方で唯一Apple Intelligenceが使えないながらも16eより100ドル高いiPhone 15の立場は怪しくなったように感じる。より多くの機能を求める顧客はiPhone 16、Apple Intelligenceを利用したい顧客は16eと、16シリーズだけでほとんどのケースに当てはめられるようになったような印象を受ける。
ここがダメ!
新製品の発表タイミングでいわゆる「ダメ出し」をするのは筆者としても非常に心苦しいが、唯一、且つ圧倒的に引っかかる点があったため、それを最後に紹介する。
MagSafe非対応、Qi最速7.5W
流石にこれはない、と言わざるを得ないだろう。Qi2の業界標準化など、MagSafeリングによる位置固定を前提とした高速ワイヤレス充電規格を広めた第一人者として、ここはAppleに対応して欲しかった、悔やむべき点であるだろう。せめてGalaxy S25シリーズのようなケースの後付けによるQi2 Ready6など他の策でも考えて欲しかったと、筆者は思う。
サードパーティ製のケースやメタルリングによる対応は充分可能であり、充電速度以外は実用性として大きな問題にはならないだろう。しかし、MagSafe方式を広めるべき立場でいながらエントリーモデルで使えないというのは、MagSafe普及の観点でも問題になってくると感じた。
追記:AirTagやAirPods Proの正確な位置情報を知らせるUWBチップも搭載していないようだ。7
総括
最後こそ少し情的に批判をしてしまったが、概ねよくまとまっているモデルではあると感じた。
ネーミングを「SE」から「16e」としたことからも、完全別枠ではなくあくまで16シリーズの一員として、充分な機能とAI時代に耐えうる性能を搭載した点は高評価であろう。
予約開始は21日金曜の22時、発売は28日金曜となる。ラインナップは白黒2色、128/256/512GBの3ストレージのため6SKUと非常にコンパクトだ。
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2025/02/apple-debuts-iphone-16e-a-powerful-new-member-of-the-iphone-16-family/ ↩︎
- https://x.com/Sankew06/status/1892259995762511897 ↩︎
- https://x.com/markgurman/status/1892255032344519066?s=61 ↩︎
- https://gigazine.net/news/20250130-apple-starlink-satellite-support/#google_vignette ↩︎
- https://www.macotakara.jp/iphone/entry-48431.html ↩︎
- https://www.macotakara.jp/news/entry-48295.html ↩︎
- https://www.techno-edge.net/article/2025/02/20/4130.html ↩︎
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