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iPhone 16レビュー:AI時代における成熟のミッドレンジ

先日、弊誌管理人のいちごもちよりiPhone 16をお借りしたので、そのレビューをしていきたい。当モデルは2024年のiPhoneシリーズの標準モデル、いわゆる「無印」にあたるもので、スマホ市場を全体で俯瞰するとミッドレンジに当たる。Appleが非常に推し進めているApple Intelligenceフル対応の初号機にあたり、AI時代に適したスマホであると喧伝している。

目次

外観・デザイン

側面は2015年のiPhone 6より連綿と受け継がれるアルミニウムで、背面は2年目となるカラーインフューズドガラス、それの繋ぎ目は綺麗に“面取り”がされている。特にカラーインフューズドガラスについては2年目となり、先代のiPhone 15よりも濃い色への採用となったことで、厚みのあるカメラ部分との色合いが美しくまとまっている。筆者がお借りしたのはティールという色で、日本語で言うと青と緑の中間色、「浅葱色」に近い印象を受けた。

カラーインフューズドガラスによってカメラ部が一段濃い色合いになっている。(筆者撮影)

今回新たに追加されたCamera Control (カメラコントロール)キーはガラスで覆われており、その高さは側面とツライチになっており、指でのすワイプ操作がしやすいように工夫されているのだろう。

サイズはiPhone 12以来続く6.1インチのサイズで、170gという比較的軽量なことも相まって持ちやすく感じた。筆者の手の大きさは日本人の平均的なサイズであるという自負があるが、裸の状態で片手操作がギリギリというラインだったため、MOFT Snap-Onを常時つけて運用していた。

Apple Intelligence

Apple IntelligenceのSiri起動アニメーション。画面全体が揺れ、非常にエロティックだ。(筆者撮影)

流石にこのスマホをApple Intelligence抜きでは語れないだろう。とは言ってもそのほぼ全ての機能を3本の記事にすでにまとめてあるため、そちらをご覧いただきたい。

全体を通して、英語限定ということが悔やまれる一方でその英語については非常にわかりやすいUIにまとまっており好印象だった。具体的には、チャットやスレッドにて複数の通知が単一アプリから来た場合は、その通知の内容を要約してどのようなやり取りが行われていたかを知ることができたり、画面上のコンテンツでわからないものがあった場合に、Type to SiriからすぐChatGPTと対話ができる、といったシチュエーションでは活躍をすることができた。

野球に関する話をDiscordでしていたところ、10件の通知をひとまとめに要約された。

Camera Control

ガラスに覆われたCamera Controlキー。右側面下部にある。(筆者撮影)

ハード的な進化点でいうならば、やはりCamera Controlが目玉だろう。他社のシャッターキーと異なり比較的高めの位置設定であったことから当初は批判も呼んだが、片手で持った時に押しやすい位置に、すぐにVisual Intellligenceを呼び出せるという1点だけでも評価に値すると感じた。

操作体系としては感圧タッチと物理的な押し込みの2段階であり、電源がオフの状態でも押し込むことができる。カメラアプリの起動時には感圧タッチでズームやフォトグラフスタイル、被写界深度といった調整をできるメニューが広がり、Camera Controlキーや画面上のスワイプで調整することができる。そのメニューは感圧タッチのダブルクリックで展開することができたり、感圧タッチ長押しでAE/AFロックができたりと、全ての操作がCamera Controlだけでも完結できるようになっている。

筆者は主にズーム倍率の調整に役立てたが、それ以外にもフォトグラフスタイルなど画面上でスワイプをすると切り替えに時間がかかるような項目も素早く切り替えられるのは高評価だった。

一方の改善点としては、シャッターを切る動作が物理的な押し込みであるため、シャッターを切った際に手ぶれが乗ることがある点と、対応アプリが少ないと言う2点だ。後者については特に、Blackmagic Cameraが対応しているが純正のFinal Cut Cameraが対応していないという歪さが気になってしまった。

カメラ

48MPのメインカメラ+12MPの超広角カメラという構成はiPhone 15から引き続いて採用されている。超広角カメラにはマクロモードも搭載されたほか、メインカメラは2倍のクロップズーム(リモザイク処理)ができることから新たにFusionカメラという名称がつき、0.5x・1x・2xの画角を選べることをアピールする。

選べる3つの画角。(筆者撮影)

また、今作からフォトグラフスタイルが刷新されたのも大きなポイントだろう。iPhone 13より搭載された従来のフォトグラフスタイルではトーンと温かみの2つのパラメータを撮影前に調整でき、その度合いをそれぞれ-100から+100まで組み合わせたプリセットを作れるというものだった。今度のiPhone 16のアップデートでは15個のスタイルから選んだ上でトーン・カラー・スタイルの強さをそれぞれ100段階から選べるようになった。また、後編集もiOS 18/ iPadOS 18/ macOS Sequoia 15以上を搭載した全てのデバイスできるようになったことで従来のフィルター機能を完全に代替するものとなった。

ここからは実際の作例を用いて紹介する。なお、具体的な撮影環境やフォトグラフスタイルの情報も透かしの形で記載する。

新宿のモード学園コクーンタワーにて撮影。コントラストの高い壁面の意匠をきちんと捉えられている。また、フォトグラフスタイル「クールローズ」はガラスの色を近未来的に美しく表現できている。

ロサンゼルス・ドジャースで活躍する大谷翔平選手のボール。Fusionカメラのセンサーサイズは1/1.56”で、ボール置きのバットの部分は自然にボケている。フォトグラフスタイルの名称「Ethereal (エーテル)」とは優美な、という意味があり、自然に冷た目の雰囲気を出せている。

新宿駅の構内案内パネルを撮影。強めの光が広範囲にわたっているが、その周辺や天井も潰れることなく表現できている。

下町風情が残る商店街として有名なジョイフル三の輪のアーケード入り口を撮影。歴史を感じる錆もきちんと表現することができている。フォトグラフスタイル「ゴールド」は黄色からオレンジにかけての色合いで、暖色系が綺麗にまとまっている。

夕暮れ時のヨドバシカメラを2倍のクロップズームで撮影。店内の白も飛ばずに、且つ雲の表現も綺麗にできている印象だ。フォトグラフスタイル「アンバー」はサンセットカラーを美しく表現できている。

同じく新宿ヨドバシを今度は近距離から超広角で撮影。各種看板や店内ははっきりと撮影できている一方、周りの建物は暗く、且つノイジーな印象を受ける。フォトグラフスタイル「ドラマチック」はその名の通りで、やや赤寄りな色使いを感じる。

上野駅にて超広角で撮影。横一列に並ぶ電光掲示板を綺麗に捉えられているほか、ある程度の光が全体的にあるためノイズもあまり目立ってない印象だ。

Fusionカメラのデジタルズームによる最高撮影倍率、10倍で撮影した東京スカイツリーだ。Appleの押し出すコンピュテーショナルフォトグラフィのおかげで大きく破綻せず、展望台や最頂部の形状まできちんと抑えられている。

新しいフォトグラフスタイルで初めて導入された白黒写真のうち、高コントラストの「Stark B&W (スターク ブラック&ホワイト)」を使って駅のエスカレーターを超広角カメラで撮影した。このコントラストにより金属光沢の重厚感が美しく表現できている印象だ。

最後に、ナイトモードで橋梁を渡る電車(E531系)を隅田川テラスより撮影した。手持ちで2.1秒の露光だったが、星空や水の反射まで綺麗に抑えられているほか、鉄橋の下から漏れる光も白飛びを避けている。また、通常よりも露光時間が長いことから、中央の2階立てグリーン車を中心に電車の光から疾走感を感じる。フォトグラフスタイル「ドラマチック」は落ち着いた色でクールトーンに表現できている。

A18チップ

従来の無印iPhoneでは1世代前のチップを採用することが通例となっていたが、今回はApple Intelligenceのために設計された最新のA18チップを搭載する。

各種ベンチマークの実行結果。

参考としてGeekBench 6でベンチマークを取ると、CPU性能は上画像のようにシングルコアスコアが3310、マルチコアスコアが8158となった。比較対象として、4年前に登場したM1ではマルチコアスコアが8767であったため、それに肉薄する数字が出せている。また、GPU性能はMetalスコアが27874であり、M1の33688には及ばないもののAAAタイトルのゲームが遊べる数字を出せている。

また、スマホの性能を測定するツールとしてお馴染みのAnTuTu 10.0.8で測定したところ、総合スコアは1,717,123となった。M1は1,826,511であり、その数字に近づけているということがわかる。特に、UXの項目ではM1の321,174に対しA18は364,830の数字を叩き出せているため、実使用での快適性能は高いと言えるだろう。

さらに、このチップはApple Intelligenceのために設計されていることを謳うため、機械学習分野に強いNeural Engineの性能をGeekBench AIで測定したところ、Quantized Score (量子化スコア)は46292であり、4世代差のあるM1の12541からおよそ4倍程度の高速化を実現できている。なお、Apple IntelligenceはM1が最低要件となっているため、その4倍という数字は今後進化した際もその性能を遺憾なく発揮できると考える。

アクションボタン

アクションボタンは、iPhone 14 Proや15以前まで搭載されていたミュートスイッチの代わりとして用意された物理ボタンであり、前世代のiPhone 15 Proに搭載されたものが無印にも降りてきた形だ。このボタンに各々がよく使う機能を割り当てることができ、具体的には集中モード、ボイスメモ、Shazam、翻訳などに加え、自分で作ったショートカットの割り当てもできる。筆者はショートカットを介してシーリングライトのオンオフに割り当てをして使っていたが、常にボタンを押すだけでいいというのは非常に気が楽で便利な機能だと感じた。

空間撮影

2024年2月に発売されたApple Vision Proで体験することのできる空間ビデオ(Spatial Video)と空間写真(Spatial Photo)の撮影に対応した。これは、超広角カメラとメインカメラ(Fusionカメラ)の画角差を利用して撮影するもので、空間ビデオのみ先行してiPhone 15 Proに初搭載された。それが、今作では無印のカメラ配置もバーティカルとなったことで撮影できるようになった。

Final Cut Proに空間ビデオを読み込んだところ、きちんとMV-HEVCと表示されていた。

空間ビデオはファイル形式がMV-HEVCとなり、現在は最大でも1080p@30fpsでしか撮影できない。また、いずれもiPhoneやiPadなどの2D画面上で表示した際は普通の写真や動画と変わらない一方で2面分のデータを持ちファイルサイズが大きくなってしまうため、Apple Vision Proを所有しない場合は当機能の実用性に疑問符だ。

その他

ここからはiPhone 15以前からあった機能や特徴のうち、筆者が気になったものをいくつかピックアップしてご紹介する。

USB-C

昨年12月28日より、携帯電話の端子をUSB-Cに義務付ける法がEUで施行されたため、それに間に合わせる形で先代のiPhone 15よりUSB-C端子に変更された。これにより充電端子がiPadやMacをはじめとした各種製品と揃うことになり、充電の利便性が向上した。しかしながら転送速度はUSB 2.0のままで、単に形状が変わっただけの変化である。また、すでに充電はMagSafeをはじめとしたワイヤレス充電も主流となっており、筆者も基本ワイヤレス充電主体のためそこまで恩恵は大きくなかった。しかし、ケーブル内蔵のPD対応モバイルバッテリーを使用する場合など、有線充電が必要な急ぎの用事のときに利便性の高い端子であるという点は意義が大きいと感じた。
なお、Lightningを振り返る記事はすでに投稿しておりますので、併せてそちらもぜひご覧ください。

Dynamic Island

Dynamic Islandの表示の一例。画像右はSwitchBotのショートカットをアクションボタンから開いた際の表示。

iPhone 14 Proより、従来のノッチがパンチホール型となり、それを活用したアイデアとしてLive ActivitiesやFace IDの認証アニメーションがまとめて画面上部に表示できるようになった。

使っていく中でも、特にコンテンツ再生時の再生・巻き戻しなどの操作やタイマー、AirPodsの接続アニメーションの表示は便利だと感じた。従来は画面をいっぱいに占領してアプリとして表示するか、ロック画面に表示させるなどの方法を取るしかなかったが、それが常に上部にあることで、時刻の確認などと同時に確認できたり、作業を中断することなく操作できたりする点は非常に優秀で、中国企業を中心に“パクり”をされる所以も理解できた。

Super Retina XDRディスプレイ

iPhone 11 Pro、12からそれぞれ搭載されたOLEDディスプレイの名称がスーパーキラキラカラフルクッキリディスプレイSuper Retina XDRディスプレイだ。Super RetinaはOLEDを、XDRはExtreme Dynamic Rangeの略でHDR輝度が高いことを意味する。もう6年以上使われているので今更ではあるが、筆者は初体験だったため、黒の表現の美しさは圧倒的だった。以下の画像は手前がiPhone 16でAppleが制作した短編「ミッドナイト」のワンシーンだが、奥のiPhone SE (LCD)とはその歴然とした差が伝わるだろう。

また、ダイヤモンドペンタイルという画素配列を採用しているため、RGBストライプ配列のLCDディスプレイに見慣れていると黒背景の上の線など微妙な違和感を感じた。しかし、数日使い続ければ特にその違和感も気になるレベルではなくなってくるため、そこまで躊躇するようなことでもないだろう。一方で、画面のリフレッシュレートが60Hzである点は気にする人は多いだろう。iOSのアニメーション最適化があるとはいえ、120Hzとの差は依然として存在するように感じた。

スピーカー

AppleはiPhone XSよりスピーカーをDolby Atmos対応にするなど長くスピーカー性能に注力してきたが、その音質や音の広がりには驚かされた。以下の動画で比較をしているが、比較対象のiPhone SEも決して悪い音ではないということも付け加えて記しておく。

衛星経由のSOS (Emergency SOS via Satellite)

衛星を介してSOS通報できる機能がiPhone 14より搭載されている。セルラーやWi-Fiのカバレッジがないエリアで遭難した際などに、最短30秒でテキストメッセージが遅れるという機能だ。実際に通報する際は110・118・119などに電話をかけ、それでも繋がらない場合に衛星経由のテキストSOSを促す表示が出るそうだ。しかし、遭難していない場合でもデモを体験することができる。空が開けたところに移動すると衛星を捕捉し、どちらの方向にiPhoneを向ければいいかが直感的にわかるようなUIになっていた。

衛星経由のSOSのデモ画面。(筆者撮影)

筆者自身はセルラー通信のない危険なところに行く機会はほとんどないが、万が一の際にもこういった機能の存在、そして使い方を知っておくことは重要だろう。当機能はアクティベーションから2年間無料で使うことができるほか、現在iPhone 14向けに1年間延長されている背景があるため、実際にお金がかかることはほとんどないと言っていいだろう。

総括

当モデルは、現代において必要十分なスペックを持った上で、そこにプラスしてApple Intelligenceを搭載したことが最大の特徴と言えるだろう。今後ますますの成長が見込めるAI分野において7年前からNeural Engineを搭載してきたノウハウを活かし、将来的に進化していった際にもついていけるだけのスペックであると感じた。

また、カメラにおいても2倍のクロップズームに対応した48MPのFusionカメラと超広角の2眼構成で、8割の人が満足できるだけのクオリティを持ち合わせていると感じた。Camera Controlがついたことによりカメラへのアクセス速度も格段に向上し、より気軽に誰でも高品質な写真や動画を撮れるようになっていた。

以上より、ほとんどの人が満足できるだけのスペックを搭載したスマホであると総括できるだろう。アクションボタンやCamera Controlキーなど、Proのみでもおかしくない機能をふんだんに搭載し、これからのAI時代において非常に成熟した、誰にでも勧めやすいスマホにまとまっていた。

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この記事を書いた人

Naoのアバター Nao 編集長

現在高校1年生で東京在住のApple信者で、ガジェットオタク。様々な観点からの情報を得ることで多角的にAppleのことを考える。普段からXにてAppleに関連したことを中心に情報を発信する。現在はM1チップモデルのiPad Proを所有し、ほぼ全ての作業をこなすiPad愛好家。

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