今日で2024年も終わり、新たな年が始まろうとしている。そこで、今年のAppleを振り返るべくiPhone・iPad・Mac・ウェアラブル・OSアップデートの5つのカテゴリについて、それぞれ最もインパクトのあった製品・OSを問うアンケートを筆者のX上で行った。また、その投票で選ばれた製品の中から決勝アンケートも行い「Product of the Year」も決めたため、それを元に今年のAppleを振り返っていきたい。
iPad of the Year: iPad Pro (M4)
まずはiPadからだ。今年登場した3つのiPad:iPad Pro (M4)、iPad Air (M2)、iPad mini (A17 Pro)の中で最も得票数を集めたのはiPad Pro (M4)だ。全体の64%の投票を得て圧倒的なトップになったこのiPadは、2018年以来となる筐体サイズの変更を伴う大きなアップデートとなった。
以前から長らく互換性を保ってきたApple Pencil (第2世代)や旧来のMagic Keyboardのサポートが外れた代わりに、スクイズやバレルロールに対応したApple Pencil Pro、ファンクションキーと大きくなったトラックパッドを持つMagic Keyboardを新たに登場させた。また、Macに先駆けて発表したM4チップはiPadでもFinal Cut ProやDaVinci Resolve、Logic Proの登場により活用幅を広げ、新たに搭載したディスプレイエンジンにより2枚重ねにした新しい構造のタンデムOLED・ Ultra Retina XDRが1600nitsの最大輝度を実現した。1
5.1mm厚という圧倒的な薄型化を実現した一方で、それをアピールするために制作したCM「Crush!」は悪い意味でも話題を呼んだ。当時の海外系Shorts動画の煽りを受けて、プレス機によって様々なツールが押しつぶされ、そこからマルチに使えるiPadが薄型で出てくると言う演出だったが、物を大事に扱う慣習がある日本人を皮切りに批判が相次ぎ、結果的にAppleが謝罪をしCM放映を撤回する事態になった2。このような点からも話題には上がり、「インパクトのある」製品ではあった。
iPhone of the Year: iPhone 16
次にiPhoneだ。例年通り2スペック2サイズの4モデル構成で登場したiPhone 16シリーズの中でも、iPhone 16 Proとの競争を抜きiPhone of the YearとなったのはiPhone 16である。
今回のiPhone 16ではシリーズ共通として後述するApple Intelligenceへの対応を重点的にアピールしており、特に画像認識系のVisual Intelligenceのために新しくCamera Controlキーが追加されたのは印象的だった3。筆者自身は弊誌編集長いちごもちよりiPhone 16を以前お借りしていたため、レビューは詳細に書く予定だ。
そのCamera Controlをはじめ、Spatial Video・Spatial Photoへの対応、マクロ撮影、アクションボタンの採用などProの機能をうまく吸収したアップデートが多く、Pro譲りな無印モデルとして人気を集めた印象がある。
Mac of the Year: Mac mini (M4/ M4 Pro)
10月末に発表され、ホリデーシーズンの土壇場で発表されたM4 Mac群にM3 MacBook Airを加えた4機種の中の投票では、Mac miniが77%と圧倒的な得票数を得てMac of the Yearに選ばれた。
Mac miniの形状は登場当初より変更がなかった中で、Apple Silicon Mac miniでは3世代目となる今回が初めての変更となった。特に、縦横5インチ(12.7cm)のサイズを実現したことは高く評価されており、尚且つ高さを高くしたことで熱効率にも配慮した設計となっており、M4 Proチップの性能をフルに活かせる環境ができている。また、Mac史上初のカーボンニュートラル製品でもあり、それには小型化をしたことで使用する再生素材の量を減らせたことも大きな要因となった。4
性能面でもM4 Proチップは、CPU性能の面で現行最強M2 Ultraにも引けを取らないため十分に優秀なスペックがminiな価格で手に入れられる5ということで評価されている。
ただし、電源ボタンが本体背面に移動した点については、シャットダウンを頻繁にする一部の層から批判がされていた。
Product of the Year: Apple Vision Pro
Wearable of the Yearに61%の票を得て選ばれたのち、最終決戦でも2位と19%の差をつけ、2024年Apple最高のプロダクトとしてProduct of the Yearに選ばれたのはApple Vision Proである。
年初の2月に米国で先行発売され、6月には日本をはじめ世界各国で発売を開始した6Apple Vision ProはApple初のHMDで、空間コンピューティングという新たな体験を提供するものだと喧伝する。両目4KのディスプレイにM2チップというHMDとしても突出した性能に加え、ハンドトラッキングとアイトラッキングで操作するという体験を実現したことで、現実世界との乖離を極限まで減らした製品になり得た。
また、9月にはvisionOS 2がリリースされ、12月のアップデートよりウルトラワイドディスプレイの表示にも対応したことで、より活用幅が広がることが期待されている。
筆者自身デモの体験を早くに行い、そのレポート記事も弊誌にて投稿しているため、ぜひご覧いただきたい。
OS Update of the Year: iOS 18
最後に、iOS・iPadOS・macOS・watchOSという4つの主力OSを抱えるAppleのアップデートのうち、最もインパクトのあったアップデートとしてOS Update of the YearにはiOS 18が選ばれた。
コントロールセンターやロック画面・ホーム画面のカスタマイズ性が圧倒的に向上し、特にホーム画面については長らく問題視されてきた自由配置やアイコン色の変更に対応したことでかなり話題となった。7
さらに、Appleの推し進めるAI・Apple Intelligenceに対応したことが目玉であり、文章の要約や検索、画像の生成などに加えChatGPTとの連携も加わり多くの面で役立ってくれる。8現在はまだ英語のみの対応だが、来年4月以降には日本語への対応も明言されており9、そうなった際にはより一層の活躍が期待できる。
まとめ
総括するならば、今年のアップデートは、ミッドティアの底上げと新機軸の2つに分かれた印象だ。
まずミッドティアの底上げについてだが、今回ノミネートされたiPhone 16の無印やMac mini、この他にもiPad Air (M2)やApple Watch Series 10など、従来のProモデルやUltraモデルに合った機能をふんだんに取り入れたことに加え、同時期に出た上位モデルの機能を同時投入するなどしてミッドティアでも十分な性能と進化が得られるようにしているのが特徴だった。例を挙げるならば、先ほどのiPad AirではApple Pencil Proへの対応10、iPhone 16ではCamera Controlと言った具合だろう。
次に新機軸だが、これはvisionOSとApple Intelligenceの2つであると言っていいだろう。visionOSについては昨年の発表より淡々と準備が進められてきたが、Apple Vision Proというハードの発売と全く新しいApp Storeを開いたことは大きいだろう。そして9月には初めてのアップデートとしてvisionOS 2がリリースされており、既存ユーザーの意見をもとにUWディスプレイ対応などを進めた印象だ。Apple Intelligenceについてはもう言わずもがなであり、Apple Carに割いていた人員を集めて急ピッチで開発を進めているという噂も聞こえる11。OpenAIという他社も巻き込み、自社の一大プロジェクトとして大きく取り扱い、且つ従来のAIが成し遂げられなかったユーザー数をすでに持っていることから、その立ち回りも重要であろう。
ここから先の来年は、Apple Intelligenceの機軸はそのままに、ハードではエントリーにも注目だろう。アップデートが2年以上ないiPhone SEや無印iPad、Apple Watch SEなどの機種を中心にしつつも、visionOSデバイスの下位グレードなど、どのように製品投入をしていくのか、慎重に見ていきたい。
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/05/apple-unveils-stunning-new-ipad-pro-with-m4-chip-and-apple-pencil-pro/ ↩︎
- https://gigazine.net/news/20240510-apple-apologizes-ipad-pro-crush/ ↩︎
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/09/apple-introduces-iphone-16-and-iphone-16-plus/ ↩︎
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/10/apples-new-mac-mini-is-more-mighty-more-mini-and-built-for-apple-intelligence/ ↩︎
- https://www.macrumors.com/2024/11/01/m4-max-chip-geekbench-benchmark-results/ ↩︎
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/06/apple-vision-pro-arrives-in-new-countries-and-regions-beginning-june-28/ ↩︎
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/06/ios-18-makes-iphone-more-personal-capable-and-intelligent-than-ever/ ↩︎
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/06/introducing-apple-intelligence-for-iphone-ipad-and-mac/ ↩︎
- https://www.macotakara.jp/news/entry-48095.html ↩︎
- https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/05/apple-unveils-the-redesigned-11-inch-and-all-new-13-inch-ipad-air-with-m2/ ↩︎
- https://backspace.fm/d078/ ↩︎
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